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新たな統合補正システムに基づいた根管長測定法 新たに開発した第3世代の根管長測定器ジャスティIIIの開発理念とその精度 なぜ根尖孔からの距離が1mm単位で測れるのか?
 
今回新たに開発した第3世代の根管長測定器ジャスティIII(JTIII )は、単に根管長測定精度を高めた測定器という位置づけだけではなく、患者に恐怖感を与えない測定器、すなわち装置を見ても患者に診療用測定器というイメージを抱かせないもので、しかも歯科医師やスタッフにとって使いやすい測定器という開発理念に基づいている( 図1 )。従って、測定を行わない場合は、メーター表示部である液晶のところを折り畳んで、単なるオシャレな一つの箱のような優しいイメージを患者に与える(図2)。
         
 
図1_ジャスティIII液晶分は術者が正確に見やすい角度に調整可能。 図2_患者に違和感を与えないようにコンパクトに収納可能。  
 
●測定機構(統合補正システム)
JTIIIが第3世代の根管長測定器と呼ばれる理由は、これまでの根管長測定器は根尖孔部のみしか検出できず、根尖孔を構成する根尖狭窄部とリーマーやファイル先端部との距離を正確に検出は出来なかった。
今回新たに開発したJTIIIは、「根管長測定において根管口から根尖孔に至る電流値の変動は大きく三つのパターンに分かれる」そして、三つのパターンに分かれる主な理由は「根管形態により電流値が変化する」ということをもとにして、推測測定値と実測測定値を統合補正しながら測定を行う装置で、根尖孔のみならず、測定用歯内療法小器具(リーマー、ファイル)先端と根尖孔との距離を正確に表示できる。
 
●根管形態により電流値が変化する
根管形態により電流値が変化することを確認するために、テフロンチューブやエポキシ樹脂を用いて三種の人工根管を作製した(図3)。この人工根管を用いて、人工根管根尖部とそこから0.5,1,2,3,4,5,6,7mm歯冠側方向に引き上げていった際の電流値を測定した(図4)。また、測定周波数は500Hz,1,2,4,8kHzで、測定電極として直径は0.1,0.2,0.3mmのピアノ線3種を用いた。
円錐形の人工根管模型を用いて測定電極の太さを0.1,0.2,0.3mmにした場合の電流値を測定した結果(図5,6,7)、電極の太さに関わらず周波数が高いほうが流れる電流が多く、しかも、測定電極が太い方がより多く電流が流れていた。
次に、直径0.1mmの電極を用いて円筒根管(図8)、円錐根管(図9)そして段付き根管(図10)での電流値を測定した結果、根管の形態に関わらず周波数が高いほうが流れる電流が多かった。根管形態としての影響は、円筒形の根管では根尖より7mm手前から電流値が増加していたが、円錐形では根尖より5mm手前までは増加せず5mm過ぎから増加を示し、段付き根管では根尖より3mmまでは増加せず、3mm過ぎてから増加していた。
     
図3_三種の形態の人工根管 図4_人工根管での電流値測定法
 
図5_円錐形人工根管模型での各周波数における電流値(電極直径0.1mm)。   図6_円錐形人工根管模型での各周波数における電流値(電極直径0.2mm)。
 
図7_円錐形人工根管模型での各周波数における電流値(電極直径0.3mm)。   図8_円筒形人工根管模型での各周波数における電流値(電極直径0.1mm)。
 
図9_円錐形人工根管模型での各周波数における電流値(電極直径0.1mm)。   図10_段付き人工根管模型型での各周波数における電流値(電極直径0.1mm)。
 
●抜去歯における測定電流値
単根のヒト抜去歯を用いて同様の実験を行なった結果、図11,12,13に見られるように、電流値の変化が人工根管模型で見られたのとほぼ同様の三種のパターンを示すことが明らかになった。
 
●実際の臨床での測定電流値
実際の臨床においても図14,15,16に見られるように、電流の変化が人工根管模型や抜去歯で見られたのとほぼ同様の三種のパターンを示すことが明らかになった。
 
 
図11_抜去歯(1)における電流値の変化 図12_抜去歯(2)における電流値の変化
 
図13_抜去歯(3)における電流値の変化   図14_実際の臨床(A)での電流測定値
 
図15_実際の臨床(B)での電流測定値   図16_実際の臨床(C)での電流測定値
 
●ジャスティIII使用時の使いやすさ
(1)液晶表示部の角度を術者である歯科医師が一番見やすい角度に動かすことが出来るため、より正確な測定が可能となる。
(2)リーマー等が根尖孔に近づくと、液晶表示画面より拡大された画面に変わり、正確な測定が可能になる(図17)。
(3)これまで収納に手間取っていたICクリップやワニ口クリップなどの測定ケーブルをワンタッチで収納でき、落下ゴミからの汚れを防ぐばかりでなく、整理されていないというイメージを払拭できる。しかも、デンタルスタッフの片付けが容易になるだけでなく、持ち運びが安全かつ簡単になっている(図18)。
 
●測定精度について
これまで広く臨床で用いられてきたエンドドンティックメーター(単一周波数測定器)は、インピーダンスが6KΩの時に根尖位置を示す装置で根管内を乾燥状態にしなければ精度よく測定ができない。
一方、二種類の異なる周波数を用いた測定器(アピット、ルートZX、ジャスティ)も根尖孔位置は測定できるが、根尖孔から離れた位置は正確には測定できない。
もちろんX線写真だけでは根尖孔部や根尖からの距離を正確に検出できない。なぜなら根尖狭窄部の位置は歯によって異なり、根尖より0.5mm〜1.5mm程度ばらつく位置に存在するからである。つまり、今までの根管長測定器はすべて根尖狭窄部だけしか見つけることができない測定器なのである。
この複雑な条件において精度を向上させるには、ある特定の数値になった時に根尖狭窄部の位置を表示しただけではだめで、数多くの根尖狭窄部データを装置内に記憶させておき、三種の基準パターン値と統合補正していかなければ正しい測定はできない。
JTIIIは、500Hzと2kHzの電流値でXY座標を作成し(図19)、この値が三種のパターン(赤・青・黄色線)のどの基準グラフ線上をたどるのかを推測し確認することによってリーマーやファイルの位置を確定し、表示する。
 
●人工根幹模型での精度証明
図4に示した回路にJTIIIを接続し、人工根管模型での精度を調べた(図20)。その結果、根尖から4mmの位置をJTIIIが表示した際に根管模型でも#25リーマーの先端部は根尖部より4mmの位置を示していた。
同様に、根尖から3,2,1mmの位置でもJTIII表示値と模型根管の表示値が一致していた(図21)。
根尖から0.5mmの位置をJTIIIが表示した際に根管模型でも#25リーマーの先端部は根尖部より0.5mmの位置を示し、表示スケールは拡大していた(図22)。
 
●臨床での使用法
従来の測定法でエンジンとファイルを使用して根尖狭窄部を越さないように作業が出来ればよいが、例え低速回転の電気エンジンを用いていても、根尖狭窄部をわずかにでも越えなければ根尖狭窄部を検出出来ないこれまでの測定法では、狭窄部を破壊する可能性が高い。従って、ニッケルチタンファイル(K3)と電気エンジンを用いて根管拡大するなら、少なくともファイルは、根尖狭窄部を破壊しないため根尖狭窄部手前2〜3mmで止める必要がある。
そして、手用リーマー等を単に回転させるのではなく、ターン&プル等のテクニックを用いて根尖狭窄部にアピカルシートを形成することが、より良い予後を得るために極めて重要である。この作業が出来る根管長測定器は従来とは異なる測定法を用いたジャスティIIIだけである。
 
●まとめ
JTIIIは、500Hzと2kHzでの電流値を用いてX,Y座標を設定するとともに、根管形態によって決定される3種の電流値上昇パターンを統合的に解析・補正し、根尖孔と根尖からの距離を決定するシステムで、根尖狭窄部からの距離を1mm単位で測定可能な根菅長測定器である。
 
 
図17_根尖3mm付近を拡大表示。 図18_測定用ケーブルをコンパクトに収納
 
図19_2種類の電流値を用いたX,Y座標と三種の標準パターン。 (★−★は測定値の一例)   図20_人工根管での4mmの位置
 
図21_人工根管での根尖からの位置   図22_人工根管模型での根尖から0.5mmの位置